日本で初めて

1923年(大正12年)に発生した関東大震災では、多くの建物被害が発生しました。
その数は、全壊が約10万9千棟、半壊が約10万2千棟です。

それがきっかけとなり、日本で初めて組織的に地盤調査が行われました。
調査をしたのは、日本の建築構造学の基礎を築いた 佐野利器(さの としかた)博士が計画した復興局です。

調査の方法として用いられたのは、ロッド、スクリュー、錘などからなる スウェーデン式サウンディング試験装置を用いて、土の硬軟や締まり具合を判定するサウンディング試験です。

ところで、佐野博士は、関東大震災の8年前に、家屋耐震構造について講演をしています。

その記録の一部を紹介しますね。

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第1.総説

耐震構造の「かなめ」とは、震力とその作用をできるだけ小さくすること、そしてこれに対する抵抗を充分に大きくすることである。
その概略を述べれば以下の通り。

1.建設地の地盤は硬質なほどよい。
ただし断崖の上は避けること。

2.基礎は深くし、かつ堅固に作ること。

3.建物の形はできるだけ単純にして凹凸を少なくし、意匠は質素なものとする。
内部に間仕切りを多く入れた部屋が小さいものがよい。
窓や出入り口が大きなものは好ましくない。

4.材料は出来るだけ軽い方がよい。
特に建物の上部を重くするのは好ましくない。

5.材料や構造はできるだけ一様で均一な剛性を持つものを用いる。
大きな強度と粘靭性、あるいは大きな剛性を持つものが望ましい。

6.建物の所在地の地質、その地における過去の大地震の記録、およびその建物の重要さの度合いに応じて標準震度を仮定する。
さらに、その震力が各方向に作用した時の建物の各部の応力をできる限り精密に求め、その時に、材料および構造に問題が生じないことを確かめること。

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このように、専門家は今から約90年前には、地盤やそれに合わせた建物づくりの重要性を認識していました。

やがて、1952年に
「地盤と建築設計震度低減に関する建築基準法施行令に対する建設省告示1074号」
が公布されたことにより、地盤の良否と、建物の設計計算が初めて直接結びつくことになります。

2,000年に改正された建築基準法により、建築物の基礎の構造は、国土交通大臣が定めた方法にすることが義務付けられています。
そのためには、地盤調査をし、その地盤の長期許容応力を調べなければいけません。

ただ、調査には数万円から数十万円が必要です。
しかも、地盤改良をすると数十万円から数百万円必要になります。
そのため、最初の頃は調査を嫌がる施主も多かったとか。

しかし、大きな震災がいくつも発生し、建物の不動沈下や土地の液状化といった映像を見る機会が増えたことにより、一般の人が地盤調査の重要性を認識するようになりました。

今、地盤の質を調べ、必要に応じて改良し、それに合わせた家をつくることが当然のようにできる時代です。
しかし、それができるのは、過去からの研究と経験の積み重ねがあったからこそ。

今月からは木構造図も添付義務になるそうです。

どんどん 地震に対しての制度が増えてきています